東京高等裁判所 昭和32年(う)374号 判決
被告人 遠藤光雄
〔抄 録〕
控訴趣意第一点について。
本件記録によれば、昭和三二年一月二三日附原審第二回公判調書には、検察官が該公判期日において、訴因変更の申立をなした旨の記載があるけれども、右訴因変更申立書を朗読した旨の記載のないことは所論のとおりである。しかしながら、公判調書に記載しなければならない事項を規定した刑事訴訟規則第四四条第一項第二七号には、「訴因又は罰条の追加、撤回又は変更に関する事項(起訴状の訂正に関する事項を含む。)」とあつて、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更に関する事項とは、刑事訴訟法第三一二条所定の事項を指すのであつて、同条には特に訴因変更の申立書を朗読しなければならない旨を規定していない。ただ所論の刑事訴訟規則第二〇九条第四項に、検察官は訴因変更申立書を公判期日において、朗読しなければならない旨を規定しているにすぎない。すなわち、訴因変更申立書の朗読のような訴訟手続上一般に当然行われるものと認められる事項については、公判調書に特に記載するを要しないのである。すなわち、公判調書にかような申立書を朗読した旨の記載がなくとも、一般的に検察官が当然訴因変更の申立書を朗読したものと推認すべきである。まして右の原審第二回公判調書には、訴因変更の申立として、検察官が別紙訴因変更申立書記載の通り申立をなし、弁護人が右訴因変更申立については、意見はないと述べ、裁判官が右の通り訴因の変更を許可し、新訴因に対する陳述として、被告人が事実は相違ありませんから申し上げることはありません、と、また弁護人は別にありません、と各供述したことが記載され、さらに同調書に別紙訴因変更申立書の添附されている事実が明白であつて、右訴因変更申立書に記載された新訴因たる公訴事実に対する被告人の陳述が明記されていることが認められるので、原審検察官は右公判期日において、訴因変更申立書を朗読したものと認めるを相当とするから原審第二回公判期日における原審検察官の訴因変更の申立は有効であつて、原審の訴訟手続には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
(工藤 草間 渡辺好)